今年、初めて柄物の生地を生産して衣服に仕立てました。
もう2年以上も前の、
2018年の5月に生地屋の女性から連絡が届いて、
どうやら私たちのメンバーに接点のある方とのことだったので、
お話を聞かせて頂くことにしたのがそもそもの始まり。
当時、まだ就職して一年目の女性でした。
日本の伝統や技術を活かしたメイドインジャパンの生地作りをされているとのこと。
生地を織ることに加え、
化学繊維を主としたプリントやプリーツ加工を得意とされているそう。
基本的にはウール100%の生地や、
アンゴラ、カシミア、リネン、コットンと自然繊維ばかりを使用している私たちにとって縁のないものだと、最初はお話を聞くのみでお別れしました。
そこから、定期的に連絡を貰って、時間がある時には私たちのアトリエにお話にみえた。
「こんなプリント出来ます」
「こんな加工できます」
全くなびかない私たちに数ヶ月で100以上の生地を提案してくれた。
BISHOOLで使わせて頂くことはないけれど、生地自体に興味はあるものだからあーだこーだ言いながら1〜2時間お話しをした。
お話の流れで、私たちの人柄や、好きなもの、もお話しさせて頂いた。
悔しい時にはトイレに篭って泣いていることや、趣味のダンスのこと、恵まれない交際経験のことなんかもたくさん伺った。
会話の中で私が、実は昔から花柄の衣服が好きで、興味あるんです、とお話ししたことがありました。
すると数日後に過去に自社で生産した花柄の生地を10種類以上集めて持ってきてくれた。
「生地だけでは想像しにくいと思うので」
とそれら全てに、パリコレクション等のルックで近い雰囲気の色/柄の衣服を見つけて、印刷して、貼って、生地の横に添えてくれていた。
生地を提案する
ではなくて
生地とその後の衣服になるまでを考えて提案する
下手に、「私に何かできることありませんか、何でもします」なんて言う人より
生地を売ることだけを考えている人より、
衣服になるまでを考えて頂ける人の方が仕事がしやすい。
その資料は、1〜2時間では到底完成できないような完成度。
1年目は何でもがむしゃらにやれと言うが、まさにその通りかそれ以上のがむしゃらっぷりを見せてくれた。
そんなことをしているうちに少しずつ仲良くなった。
何度かお酒も飲んだ。
結局、2018年には1m足りとも生地を購入させて頂くことはなかった。
それなのにも関わらず何度もアポイントをとってくださり、生地の提案と世間話にみえた。
最初の頃聞いた新しく出来た彼氏とは、いつの間にかお別れをしていた。
それほどの期間、私たちは何も購入していないのに、定期的にアトリエまで足を運び続けてくださった。
この会社、新人の子が買いもしないうちみたいなブランドに結構な時間使ってるけど大丈夫かな、なんて心配にもなるほどに。
仲も良くなって、とんでもない努力と工夫を地道に見せてくれると、
徐々に信用が生まれます。
力になりたいなんていう気持ちも恐れ多いですが生まれてきました。
1年以上が経過してやっと、
貴社の得意とする「プリント」を是非お願いします。
と花柄の生地の生産を依頼しました。
そこから、
生地をどのような物にしよう
柄はどのような物にしよう
色は、
プリントの手法は、
と10回以上の打ち合わせを重ねて、
柄/色に関しては50種類以上のサンプルを起こして、
完成しました。
これが、花柄の生地を展開するまでの経緯です。
間違いなく、私たちはこの女性が現れなかったらこの生地を生産することは出来なかった。
もちろん、お客様にお届けすることも出来ていなかった。
素敵な生地屋の方と共に手間をかけて生産したオリジナルの生地を、
多くの方々にお楽しみ頂けましたら嬉しく思います。